サルスエラとは
Representación de la Zarzuela
文・資料:桜田ゆみ Yumi Sakurada
サルスエラをご存知ですか? スペイン料理、魚介のスープの名前にもありますが… サルスエラは、歌と芝居と舞踊で繰り広げる、スペインの伝統舞台芸術です。
誕生から360年、スペイン人の故郷の歌、心も躍るサルスエラをわかりやすくご紹介します。
サルスエラって何? ¿ Qué es la Zarzuela ?
サルスエラは、17世紀にマドリッドで生まれたスペインの伝統舞台芸術です。その昔、王様の離宮、サルスエラ宮殿で行われていたので、サルスエラと呼ばれるようになりました。サルスエラ宮殿の名前の由来は、宮殿がサルサの花(la zarza)に囲まれ、たくさんのサルサの実(木苺、ブラックベリー)がなっていたからサルサ…サルサス…サルスエラいう説がありますが、本国スペインでも本当のところはわかっていません。
当時のサルスエラは神話が中心の演劇でしたが、歌や舞踊が加わり、やがて一般にも広く親しまれるスペイン特有の、エンターテインメントに発展しました。因みにスペイン語の“Z”は“セタ”と発音するので、Zarzuelaはザルズエラと読まずにサルスエラと読みます。ビール→Cervezaもセルベッサと発音します。
Palacio de la Zarzauela Antiguo サルスエラ宮殿
サルスエラには2つのタイプがあります
Hay dos tipos de zarzuela
ひとつはサルスエラ・グランデと呼ばれる、3幕構成でスペインの歴史を物語るもの。
◇バルビエリ作曲「ラバピエスの理髪師」Francisco Asenjo Barbieri “El Barberillo de Lavapiés”
◇ アリータ作曲「マリーナ」Emilio Arrieta “Marina”
もう一つは、ヘネロ・チーコと呼ばれる1幕もので、日常を描いたもの。
◇ブレトン作曲「聖パロマの夜祭り」Tomás Bretón “La Verbena de la Paloma”
◇チュエカ作曲「ラ・グランビア」「お水、お菓子とお酒」F. Chueca “La Gran Vía” “Agua,azucarillos y aguardiente”
◇チャピ作曲「人騒がせな娘」R. Chapí “La Revoltosa”
ヘネロ・チーコとは?
¿ Qué es el Genero Chico ?
ヘネロ・チーコは1867年にマドリッドの小さな劇場で初めて上演されました。2幕または3幕だったサルスエラが、ヘネロ・チーコは1幕のみ。上演時間も1時間程度で、内容はマドリッドの日常、劇中の歌はポピュラー的で気楽に鑑賞できるものがほとんどです。サルスエラは18世紀後半から19世紀にかけて、イタリアオペラの人気に押され、衰退した時代がありましたが、新しいスタイルのヘネロ・チーコの登場によって見事に復活しました。スペイン気質たっぷりの演目は、今も本国で愛され、上演され続けています。地元に根付いたコミカルな舞台は、吉本新喜劇のようです。
「パロマの前夜祭」より
「パロマの前夜祭」より
「人騒がせな娘」日本初演より
ロマンサとは?
¿Cómo es la Romanza en la Zarzueala?
劇中で主要な登場人物がひとりで歌う歌のことを、オペラではアリアと言いますが、サルスエラでは“ロマンサ”“と言います。サルスエラには歌手、俳優、コメディアン、舞踊手らが出演し、それぞれに重要な役割が与えられています。座長の位置を示す看板スターの歌手が、美しく印象的なロマンサを歌い上げます。
「ルイサ・フェルナンダ」スペイン大使館公演
サルスエラはオペラ?オペレッタ?
それともミュージカル?
¿ La zarzuela es opera, opereta o musical ?
答えはそのどれでもありません。サルスエラはサルスエラというジャンルとして確立されています。マドリッドで生まれたスペイン独自の文化で、台本作家も作曲家もスペイン人です。スペインの土地に根付いた民謡的な歌の節まわしや、民族衣装の美しさも、サルスエラが他のジャンルとは全く異なった、スペイン独特の輝きを放つ、魅力的な舞台芸術であることを証明してくれます。
「人騒がせな娘」日本初演より
サルスエラを観てみたい!
¡ Vamos a ver la Zarzuela en España !
スペインを訪れたら、是非、マドリッドで本場の
サルスエラをご覧下さい。
サルスエラ劇場:Teatro de la Zarzuela(メトロlinea2 Sevilla駅下車)
Dirección:Calle de Jovellanos, 4, 28014 Madrid, España
Teléfono:91 524 54 00
サルスエラ劇場にてスペイン文化庁
Directora Margarita Jiménez Peñaと
サルスエラの見どころ聴きどころは?
¿ Lo más interesante de Las Zarzuelas ?
サルスエラを観ると、“三つの魔法” にかかります。序曲を聴けば「血“Sangre”」が騒ぎ、ロマンサで「魂“Alma”」が震え、観る終わった後には「命“Vida”」がみなぎっていることでしょう。これがサルスエラのマジックです。冒頭からスペインを感じる、粋でキレの良いリズム、カスタネットやタンバリンが鳴り響くと、一気にスペインへといざなわれます。スペインの哀愁を帯びたロマンサの、節回しや変拍子に不意をつかれ、そうこうするうちに心をわしづかみにされてしまうのです。サルスエラに登場する、スペイン人の魅力的な声を聴くだけで、明るく前向きになれるはず。やはりスペインは、情熱の国なのです!
これからのサルスエラ Las Zarzuelas en futuro
いつの時代もどの国も、伝統芸能を伝承する苦労はつきません。スペインのサルスエラも、伝統と改革の狭間でおこる様々な事柄に柔軟に対応しつつ、古き良き時代の伝統を甦えらせています。
新演出によって、次世代のサルスエラは益々素敵になっていますので、スペインを訪れたら是非、サルスエラ劇場へ足を運んでくださいね! そして日本では、当協会でサルスエラ公演を行っておりますので、こちらも楽しみにいらしてくださいませ。
魅惑のスペイン音楽
サルスエラ 講座
於:スペインクラブ銀座